10年ほど前。広島 尾道で働いていた頃、当時地元では珍しくも「ナチュラルワインがいただけるお店がある。」という噂を耳にしました。

ガラス張りの窓に葡萄の蔦が茂っていて、かっこいい佇まいだな~でもなんだか大人っぽくて扉を開く勇気が…と、しばらく行けず終いだったところ、会社の先輩からお誘いいただき念願叶いそのお店に潜入することに成功。

いただいたのは白ワインとオレンジワインで、口に含んだ時の一言では表せない複雑な香りと、喉を通った後の体にすーっと溶け込んでいくような感覚がとても心地よく、はじめて口にしたナチュラルワインの味わいをはっきりと覚えています。

こんなにおいしいお酒があるなんて!なんとなく飲みにくくて気が進まなかったワインのイメージがこの時覆されました。

おいしいから好きというシンプルな想いからナチュラルワインを嗜む機会が増え、ある時「結局どんなワインが好きなの?」と尋ねられ、自分が好きなワインを探してみようと思うように。

品種や産地はもちろん、白と赤の違いもよくわからずからのスタートで、ナチュラルワインの本を数冊買って、気になるワインがあれば週末にドライブがてら隣町まで買いに行き実際に飲み比べてみる…というルーティンを送っていました。

▲広島PARCO前で開催されたナチュラルワインのイベントでの一枚

自分の好きを見つける=旅をしているような感覚があり、ますますナチュラルワインが好きになっていきました。

その頃地方ではナチュラルワインをいただける機会が少なかったので、新幹線や時には飛行機で移動しイベントに参加することもありました。

 

▲札幌にあるナチュラルワインのお店にて (翌日は旭川で開催されるナチュラルワインのイベントに参加)

ナチュラルワインは、できる限り自然に負荷をかけない製法で作られているワイン(もっと深いですが)と言われていますが、同じ"品種・場所"の葡萄で作っても、"作り手・製法・年代"で味わいがことなります。

市場の流行りを追ったり、味を安定させるような、いわゆる「消費者目線」のもの作りではなく、土壌をはじめとするあらゆる地球環境を尊敬し大地が生み出すありのままを1瓶に閉じこめる「生産者目線(想い)」のものづくりで、そんなシンプルでロック的信念(個人的見解)にも惹かれ惚れ込んでいきました。

「こうでなくてはならない、美味しいの正解はこれ」という概念がなく、自分が好きな味、相手が好きな味、いろんな個性があることが当たり前でそれを受け入れ、気取っていなくてとても自由。

そんなナチュラルワインの世界観が好きで、私の交流関係もそんなあたたかい輪を広げて繋げていけたらいいな。と思っています。

▲生ハムととうもろこしをオリーブオイル、塩、ペッパーでシンプルに仕上げた一品

自宅では、ナチュラルワインを数本常備して、友人が来た時にさっと手軽に作れるワインのアテレシピもいくつかストックしています。

▲時にはピクニックをしながら外で楽しむことも

私にとってナチュラルワインは暮らしの一部に欠かせない存在で、ナチュラルワインを通して過ごす時間や食卓をこれからも大切にしていきたいと感じています。

PROFILE

岡崎 ちひろ

広島県出身。
都内のグロッサリーショップに勤め、食料品の販売、イベントの企画運営を行う。
「食」から繋がる仕掛けを日々模索中。
INSTAGRAM: @chihiro_okazaki